底地の流動性を高める新たな選択肢

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底地は、流動性の低さが最大の課題です。多額の資産であるにもかかわらず、すぐに売却して現金化することが難しく、相続が発生した際も遺産分割が複雑化しやすい特徴があります。近年、この流動性の問題を解決し、底地資産をより柔軟に活用するための選択肢として、不動産の証券化小口化商品への組み込みが注目を集め始めています。

不動産の証券化(J-REIT、SPC)の仕組み

不動産の証券化とは、特定の不動産(この場合は底地)から得られる賃料収入などのキャッシュフローを裏付けとして、有価証券(投資証券など)を発行し、広く投資家から資金を募る手法です。

  • J-REITへの組み込み
    J-REIT(不動産投資信託)は、主にオフィスビルや商業施設などの優良な収益不動産を組み込みますが、ポートフォリオ多様化の一環として、稀に底地も組み込まれることがあります。底地がREITに組み込まれることで、流動性が低い資産が、流動性の高い金融商品に変わるという画期的な変化をもたらします。
  • 特定目的会社(SPC)の利用
    複数の底地を一つのSPC(特別目的会社)に譲渡し、そこから発生する収益を投資家に分配する仕組みです。この手法は、大規模な底地ポートフォリオを持つオーナーが、一括で資産を売却し、安定したリターンを得るために利用されます。

【オーナーのメリット】

証券化によって底地を売却できれば、交渉コストや売却期間といった煩雑な手間から解放され、一度に多額の現金を手にすることができます。

不動産小口化商品:相続対策と流動性の両立

より小規模な底地オーナーにとって現実的な選択肢が、不動産小口化商品です。底地の所有権を細かく分割し、少額から複数の投資家が購入できるようにする仕組みです。

種類特徴相続税評価
共有持分型底地を複数のオーナーが共有する形底地として評価され、借地権付き土地としての低い評価額が適用される(相続対策に有効)
匿名組合型オーナーは出資者となり、運用を業者に委託する形金融資産として評価されることが多く、不動産としての評価減は適用されないことが多い

【オーナーのメリット】

  • 流動性の向上
    底地全体を売却するよりも、小口化した持分を売却する方が買い手を見つけやすく、現金化しやすい。
  • 遺産分割の円滑化
    底地を小口化して複数の相続人に分配できるため、「誰が土地を継ぐか」という遺産分割の争いを避けることができます。特に複数の底地を所有する場合に有効です

証券化によって底地を売却できれば、交渉コストや売却期間といった煩雑な手間から解放され、一度に多額の現金を手にすることができます。

小口化商品活用の注意点と事前準備

小口化商品を活用する際は、以下の点に注意が必要です。

【オーナーのメリット】

  • 税務上の評価
    匿名組合型の場合、底地特有の「貸宅地評価減」が適用されず、相続税対策としてのメリットが薄れる可能性があります。共有持分型を選ぶ場合でも、税理士と連携し、相続税評価がどうなるかを事前に確認することが必須です。
  • 運営管理費
    小口化商品の運営には、管理業者への手数料が発生します。このコストが、地代収入を圧迫しないかを事前にシミュレーションする必要があります。

オーナーが底地の流動性を高めるためには、日頃から地代を適正水準に改定し、契約書や図面を整理して、売却や証券化を検討する業者がスムーズに評価できる状態にしておくことが重要です。流動性が低い資産であるからこそ、多様な出口戦略を準備しておくことが、安定した底地経営の鍵となります。

まとめ

底地の最大の課題である流動性の低さを解決する選択肢として、証券化不動産小口化商品が注目されています。底地がJ-REITやSPCに組み込まれることで、流動性の低い資産を現金化することが可能になります。また、不動産小口化商品は、底地の所有権を細分化することで、売却の円滑化遺産分割の簡素化を実現し、相続対策にも有効です。活用に際しては、税務上の評価減の適用可否など、専門家との事前確認が必須です。