
近年、全国的に深刻化する「空き家・老朽化」問題は、借地上の建物にも例外なく波及しています。借地上の建物が空き家化したり、極度に老朽化したりすることは、地代回収の停止、景観の悪化、そしてオーナーの民法上の損害賠償リスクを高めます。この社会的な問題は、一方で、オーナーの土地利用権の回復を促す法改正の動向を生み出しており、底地市場に新たな変化とチャンスをもたらしています。
空き家・老朽化が底地オーナーにもたらす3つのリスク
1.地代収入の途絶と費用リスク
空き家化により地代の回収が困難になる、または建物が倒壊した場合、オーナーは建物収去費用を一時的に立て替えるリスクを負います。
2.損害賠償リスク(民法717条)
老朽化建物の倒壊により隣地や通行人に損害を与えた場合、オーナーは「土地の工作物の瑕疵」として、連帯して損害賠償責任を負う可能性があります。
3.資産価値の低下
周辺環境の悪化や土地の利用制限により、底地全体の市場価値が低下します。
法改正の動向:空き家対策特別措置法の強化
国は、空き家対策を強化するため、2015年に「空き家対策の推進に関する特別措置法」を施行し、さらに法改正の議論を進めています。
1.特定空き家への対処
行政は、倒壊の危険性などがある「特定空き家」に対し、所有者(この場合、借地権者)に除去や修繕を勧告・命令できます。
2.代執行
命令に従わない場合、行政が代執行(強制的な解体)を行い、その費用を所有者に請求できます。
3.固定資産税の優遇措置解除
特に危険な空き家に対しては、「住宅用地の特例」(固定資産税が最大6分の1になる優遇措置)の適用が解除され、税負担が増加します。これにより、借地権者に売却や解体を促す圧力がかかります。
市場動向とオーナーのチャンス
この法改正の動向は、底地市場に以下のチャンスをもたらします。
1.借地権者の売却意欲の向上
固定資産税の優遇が解除されれば、借地権者の税負担が増大し、借地権の早期売却や無償返還に応じやすくなります。
2.オーナーからの交渉材料
オーナーは、行政の特定空き家への認定や、固定資産税の優遇解除といった外部環境の変化を交渉材料として利用し、老朽化建物の解体や、借地権の買い取りを有利に進めることができます。
3.行政との連携
オーナーは、老朽化の進む建物の情報を行政に提供し、行政指導を通じて借地権者に是正を促すという「第三者の力」を利用した解決を図ることができます。
オーナーは、この法改正の波を好機と捉え、トラブル回避と資産価値向上に向けた戦略を練るべきです。
まとめ
空き家・老朽化問題は、底地オーナーに地代収入の途絶や民法上の損害賠償リスクをもたらします。一方で、空き家対策特別措置法の強化は、市場にチャンスを生んでいます。行政による「特定空き家」認定や固定資産税の優遇解除は、借地権者に早期の売却・解体を促す強力な圧力となります。オーナーは、この法改正の動向を好機と捉え、行政指導という「第三者の力」を利用しながら、老朽化建物の解体や借地権の買い取りを有利に進める戦略を採るべきです。
