カテゴリ: 税務・お金

地代の値上げ交渉は、借地借家法の保護のもと、借地権者側が有利に進められることが多く、オーナーの希望通りにいかないことが珍しくありません。
交渉が不調に終わった場合でも、オーナーは税務署から「みなし贈与」を指摘されるリスクから身を守るための対策を講じる必要があります。
交渉不調の先に潜む「みなし贈与」リスク
地代の値上げを怠り、長期間にわたり周辺相場よりも著しく低い地代を維持していると、税務署は「相当の地代」との差額を借地権者への贈与とみなし、借地権者に贈与税を課税するリスクがあります。オーナーに贈与の意図がなくても、税務署が客観的な状況(地代の低さ)から判断するため、非常に危険です。
【相当の地代の目安】
税務上の「相当の地代」は、一般的に土地の更地評価額の年6%程度と言われています。
実際の地代がこれよりも低い場合、みなし贈与のリスクが高まります。
税務上のリスク回避策
地代の値上げ交渉が不調に終わった場合でも、以下の方法で税務上のリスクを軽減できます。
- 「土地の無償返還の届出書」の提出
この届出書を税務署に提出することで「土地を無償で返してもらう代わりに地代が安いことを容認している」という意思表示を公的に行うことができます。これにより、みなし贈与の指摘を受けるリスクを大幅に軽減できます。ただし、この届出書は借地権者との合意が必要であり、提出後はオーナーの所有する土地の評価額が下がる(借地権の価値が高まる)というデメリットも生じるため、税理士との詳細な相談が必要です。 - 差額を「立替払い」する
オーナーが、相当の地代と現在の地代の差額について、借地権者に代わってオーナーがその差額を税務署に支払うという方式です。この手続きを行うことで、みなし贈与のリスクを回避できますが、オーナー側に費用負担が生じるため、慎重な検討が必要です。 - 権利金や保証金の受け取り
地代の値上げが難しい場合、代わりに借地権者から権利金や保証金としてまとまった金銭を受け取ることがあります。これにより、オーナー側は一時的に大きな収入を得られ、地代が低いことによる税務上の指摘を避ける根拠の一つとなり得ます。
オーナーの適切な行動の記録と証拠保全
地代の値上げ交渉を誠実に行い、その記録(内容証明郵便の控え、交渉記録など)を保管しておくことも、税務署に対して「みなし贈与の意図はなかった」と証明するための重要な証拠となります。トラブル回避と税務リスク軽減の両面で、すべての交渉過程を書面で残すことが重要です。
まとめ
地代の値上げ交渉が不調に終わった場合、オーナーは「みなし贈与」のリスクに直面します。これを回避するためには、「土地の無償返還の届出書」を税務署に提出する(借地権者との合意が必要)ことや、地代の差額分をオーナーが負担する「立替払い」を検討する必要があります。オーナー側に贈与の意図がなかったことを証明するため、すべての交渉記録を書面で保全し、税理士の指導のもとで適切な税務処理を行うことが重要です。
