
底地を所有している方にとって、相続は避けて通れない重要な問題です。
一見「不動産資産」としての価値があるように見える底地ですが、相続の場面では評価が低く、分割や承継の難しさが資産価値に直結することがあります。
本記事では、底地の相続が資産価値に与える影響と、価値を守るための対策を詳しく解説します。
相続時の底地評価はなぜ低いのか?
底地は、借地人が土地を使用している状態のため、所有者(貸主)は自由に利用・売却することができません。
そのため、相続税評価においては「通常の土地よりも価値が低い」と判断されます。
具体的には、底地の評価は次のように算出されます。
底地の評価額 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合)
たとえば借地権割合が70%の地域であれば、底地の評価はおよそ30%程度に下がります。
この評価の低さは一見「相続税対策として有利」と思われがちですが、実際の運用・分割の段階ではデメリットとなる場合もあります。
相続人間での「分割トラブル」に注意
底地は現金のように分けることができないため、相続人が複数いる場合にトラブルの火種となりやすい資産です。
たとえば、相続人AとBが底地を共同相続した場合、下記のような問題が生じます。
- 地代の受け取りをどう分けるか
- 管理や税金の負担を誰がするか
- 売却や借地人との交渉は誰が行うのか
さらに、相続人の1人が「底地を売却したい」と考えても、他の相続人が反対すれば簡単には動かせません。
結果として、管理が行き届かず、資産価値がさらに下がるケースもあります。
「遺言書」と「事前対策」で円滑な承継を
底地を持つ方にとって、最も重要なのは「事前の準備」です。
特に、誰に底地を相続させるのかを明確にしておくことが、資産価値の維持につながります。
有効な手段としては、下記のような方法があります。
- 遺言書で底地の承継者を明確にする
- 家族信託で管理や地代受領を一元化する
- 相続発生前に一部を売却し、分割しやすい形にしておく
これにより、相続後の混乱や管理の停滞を防ぐことができます。
借地人との関係継続を意識する
相続によって所有者が変わると、借地人が不安を感じたり、契約更新時にトラブルになることがあります。
そのため、相続後もスムーズに地代徴収や契約管理が続けられる体制づくりが重要です。
たとえば、下記のような対応が、底地の「安心感」と「信頼」を保ち、結果的に資産価値の維持につながります。
- 借地人に新所有者を正式に通知する
- 管理会社を介して継続的な対応を行う
- 相続前から借地人と良好な関係を保つ
相続税・譲渡税の「二重負担」を避ける工夫
底地を相続した後、売却や整理を検討する際には、税金面のシミュレーションも欠かせません。
底地は相続時点で低く評価されるため、売却時に譲渡所得税が多く発生するケースがあります。
また、相続人が複数いる場合は、売却益をどう分配するかでも揉めやすくなります。
事前に税理士に相談し「相続時評価額の根拠」と「売却益に対する課税シミュレーション」を確認しておくことが賢明です。
まとめ
底地は「相続評価が低い=得」とは限りません。
実際には、分割・管理・税務の難しさが資産価値を下げる要因になることがあります。
したがって、相続前の準備こそが最大の防御策です。
遺言書や家族信託などを活用し、次世代にスムーズに承継できる体制を整えることで、底地の資産価値を守ることができます。
