金利・不動産価格・法改正など底地市場を読む

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底地(貸地)を取り巻く市場は、ここ数年で大きく変化しています。2020年代初頭から続く地価の上昇、相続税の改正、そして金利動向の変化が、底地の資産価値や流通状況にじわじわと影響を与えています。
本コラムでは、2025年以降の底地市場の方向性を、「金利」「不動産価格」「法改正・制度面」の3つの視点から整理し、オーナーが今後どのように判断・行動していくべきかを解説します。

金利上昇局面が底地市場に与える影響

2024年、日銀が長年続けてきたマイナス金利政策を解除したことで、市場の資金調達コストが上昇しました。不動産市場全体では「融資姿勢の厳格化」が進み、特に収益性の低い物件の取引が鈍化しています。
底地も例外ではなく、これまで投資対象として底地を積極的に購入してきた投資家やファンドの動きがやや慎重になってきました。

しかし一方で、底地はもともと安定した収益を生む“守りの資産”とみなされており、急激な価値下落のリスクは限定的です。
むしろ、リスクを抑えたい投資家が再び底地市場に目を向ける動きも見られます。

  • 低リスク・安定志向の投資家が底地市場に再注目
  • 高金利化による借地人側の負担増 → 地主との交渉増加
  • 底地の「流通価値」は横ばい〜やや上向きの傾向

特に都心部では、借地権者からの「底地買取」や「底地・借地の一体売却」ニーズが増加しています。
金利上昇は確かに取引を鈍らせますが、一方で現金保有層の底地取得意欲を刺激する面もあります。

不動産価格全体の動きと底地の相関

地価の動向も底地市場には直接的な影響を及ぼします。
ここ数年、住宅地・商業地ともに地価上昇が続いてきましたが、2025年以降は一部地域で「価格調整期」に入ると予測されています。

  • 地方都市・郊外
    下落または横ばい
  • 大都市圏中心部
    高止まりまたは緩やかな上昇
  • 再開発エリア
    引き続き強い需要

底地の場合、借地権付き不動産の価値と連動して評価されるため、地価上昇局面では底地も相対的に価値上昇します。
ただし注意が必要なのは、底地の評価は「地代収入」「借地契約条件」「借地人の属性」など多くの要素に左右される点です。
したがって、単に地価が上がったからといって底地の評価額が比例して上がるとは限りません。

また、都市部では借地権者からの「底地買取交渉」が増加しており、市場価格よりも高い水準での個別取引も見られます。これは、借地人が自用地化を進める動きの表れといえます。

法改正・制度面の変化

2023年から2025年にかけて、不動産関連法や税制の改正が相次いでいます。
底地に関連する主なポイントは以下の3つです。これは底地の流通促進を後押しする重要なトピックです。

  1. 相続税評価の見直し
    底地の相続税評価額が地域によって上昇傾向。
    これにより、相続対策の一環として底地売却・整理を検討する地主が増えています。
  2. 借地借家法の運用ガイドライン見直し
    借地契約更新や地代改定に関する実務運用がより明確化され、トラブル回避が容易に。
    反面、地代交渉の柔軟性がやや制限される動きも。
  3. 底地・借地の一体化促進政策
    国や自治体が老朽化エリアの再開発を進める中で、「底地と借地の一体化」を支援する制度(補助金や税制優遇)が検討されています。

今後3年間の底地市場の見通し

今後3年(2025〜2027年)にかけての底地市場としては、短期的な投資対象というよりも、中長期の資産保全・再開発への布石として底地を位置付ける動きが広がるでしょう。
下記の環境変化の中で「安定資産としての再評価」が進むと予測されます。

  • 金利:上昇→安定化フェーズ
  • 地価:地域差が拡大
  • 法制度:整理・明確化が進む

まとめ

底地市場は今まさに転換点にあります。
金利の上昇や地価の変動が取引を抑制する一方で、制度整備や再開発需要が底地の新たな価値を生み出しています。
これからの地主・オーナーに求められるのは、「底地を保有し続けるのか」「整理・売却して資産を再構築するのか」の戦略的判断です。
市場の流れを正しく読み取り、専門家と連携しながら次の一手を考えることが、2025年以降の底地経営を成功に導くカギとなるでしょう。