
このコラムでは、底地を相続する際に知っておくべき評価方法の基本と、相続時に注意すべきポイントを解説します。
底地の相続はなぜ難しいのか
相続は誰にとっても複雑な手続きですが、底地が遺産に含まれている場合、その難易度はさらに増します。現金や預金のように簡単に分割できないだけでなく、そもそも「底地」の正確な価値をどう評価すればよいのか、迷う方が少なくありません。
底地は、借地権という他人の権利が設定されているため、土地を自由に使うことも、好きなように売ることもできません。そのため、通常の土地(自用地)とは異なる特別な評価方法が必要となります。この評価方法を誤ると、相続税を過剰に支払ったり、逆に税務調査の対象となったりするリスクがあります。
底地の相続税評価額
底地の相続税評価額は、非常にシンプルな計算式で算出されます。
底地の評価額 = 自用地評価額 × (1 - 借地権割合)
この計算式を理解するためには、二つの重要な要素を知る必要があります。
- 自用地評価額
これは、その土地に何も権利が設定されていない場合の、いわゆる「更地」としての評価額です。一般的には、国税庁が公表している「路線価図」や「倍率表」を基に計算します。 - 借地権割合
その土地の権利のうち、借地権者が持つ権利の割合を%で示したものです。これも国税庁の「路線価図」に記載されています。例えば、「路線価図」に「200C」と書かれている場合、「200」が路線価(1平方メートルあたりの評価額)で、「C」が借地権割合(70%)を示しています。
例えば、自用地評価額が5,000万円で、借地権割合が60%の土地の場合、底地の評価額は5,000万円 × (1 – 0.6) = 2,000万円となります。
この計算式からもわかるように、借地権割合が大きい地域ほど、底地の評価額は低くなります。底地の正確な評価には、専門的な知識が不可欠ですので、税理士に相談することをお勧めします。
遺産分割で揉めないために
相続した底地は、現金や預金のように簡単に公平に分割することが難しいため、遺産分割協議が難航することがよくあります。
例えば、兄弟3人が底地を相続する場合、「3人で共有名義にする」という方法もありますが、これは将来の売却や管理を複雑にするリスクを伴います(※コラム4を参照)。
遺産分割協議をスムーズに進めるためには、以下のポイントを参考にしてください。
- 専門家による正確な評価
まずは、不動産鑑定士や税理士に依頼し、底地の正確な価値を客観的に評価してもらうことが重要です。これにより、相続人間で公平な分配が可能になります。 - 他の財産との調整
底地を特定の相続人が単独で相続する代わりに、現金や他の不動産で調整し、公平な分配を図る方法もあります。 - 将来のビジョンを共有する
相続した底地を将来的にどう活用したいか(売却、建て替え、そのまま保有など)を共有者間で話し合い、全員が納得できる解決策を探ることが大切です。
まとめ
底地の相続は、単なる財産の引き継ぎではなく、将来の管理や活用を見据えた長期的な計画が求められます。相続が起きる前から、家族間でしっかりと話し合い、準備を進めておくことが、無用なトラブルを防ぐための最善策と言えるでしょう。
