
底地オーナーが直面する契約違反の中でも最も重大なものが、借地権者による借地権の無断譲渡(売買)や無断転貸(又貸し)です。これらの行為は、借地契約の根幹である信頼関係を破壊する行為とみなされ、オーナーは原則として契約を解除する権利を持ちます。しかし、契約解除には厳格な法的要件があり、手順を誤ると訴訟でオーナーの解除請求が認められないリスクがあります。契約解除を成功させるための、発見から訴訟提起までの法的手順を理解しましょう。
無断譲渡・転貸が「信頼関係の破壊」にあたる理由
借地契約は、地代支払い能力や土地の利用方法など、借地権者個人に対するオーナーの信頼に基づいて成立しています。オーナーの承諾なしに権利が第三者に渡ると、その信頼関係が根本から崩壊したとみなされます。無断譲渡・転貸の発見方法について見ていきましょう。
1.建物の登記事項証明書
借地権者の名前が変わっていないか、建物の所有権名義を定期的に確認します。名義が第三者に移転していれば、無断譲渡の確実な証拠となります。
2.地代の振込名義
地代の振込名義人が、契約書に記載された借地権者とは異なる個人・法人名になっていないかを確認します。
契約解除を成功させるための法的手順
無断譲渡・転貸の事実を発見した場合、オーナーは以下の手順を正確に踏む必要があります。
1.無断行為の調査と証拠確保
建物の登記事項証明書を取得し、新しい名義人の情報を確認します。可能であれば、現地調査を行い、第三者が土地を利用している事実を写真などで記録します。
2.内容証明郵便による「催告」と「解除の意思表示」
地代の振込名義人が、契約書に記載された借地権者とは異なる個人・法人名になっていないかを確認します。
- 催告
無断譲渡・転貸の事実を指摘し「〇日以内に元の状態に戻すか、正当な理由を説明するよう」求めます。 - 解除の意思表示
「この催告に応じない場合、本契約を解除する」という明確な意思を内容証明郵便で通知します。これは、訴訟で契約解除を認めてもらうための必須要件です。
3.訴訟提起
- 建物収去土地明渡訴訟
催告期間が経過しても借地権者側が何ら対応しない場合、裁判所に建物収去土地明渡訴訟を提起します。 - 訴訟で問われること
裁判所は、形式的な無断行為だけでなく「その無断行為がオーナーと借地権者の信頼関係を決定的に破壊したか」という実質的な判断を行います。
オーナーが長期間滞納を容認していたなどの事情があると、信頼関係の破壊が認められにくくなる場合があります。
オーナーは、無断行為の事実を感情的に追及するのではなく、弁護士と連携し、客観的な証拠と明確な解除の意思表示という法的要件を整えて手続きを進めることが、トラブル回避の鉄則です。
まとめ
借地権者による無断譲渡・転貸は、信頼関係の破壊とみなされ、オーナーは契約を解除できます。トラブル回避のためには、建物の登記事項証明書を定期的に確認し、無断行為の事実を客観的な証拠で確保することが重要です。事実が確認されたら、内容証明郵便で無断行為の是正を催告し、解除の意思を明確に通知します。催告に応じない場合は、速やかに建物収去土地明渡訴訟を提起します。オーナーは、感情論を排し、弁護士と連携して法的手順を正確に踏むことが、契約解除成功の絶対条件です。
