借地権者が「法人」の場合の契約管理

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底地オーナーの中には、借地権者が個人ではなく「法人(企業)」であるケースが存在します。法人を相手とする契約は、個人とは異なる特有のリスク、特に解散や倒産といった「企業の消滅リスク」を内包しています。法人が借地権者の場合、地代の支払い能力の判断や、万が一の際の契約解除手続き、そして土地利用権の回復手続きが複雑化します。
トラブルを回避し、安定した底地経営を維持するためには、法人特有のリスクを理解した契約管理が必要です。

法人契約特有の2つのリスク

1.解散・倒産リスク

法人が倒産した場合、借地権は破産管財人によって管理・売却されることになります。
オーナーは、破産管財人との間で借地権の処理(契約の解除、破産財団への売却)について協議する必要があります。

2.合併・吸収による名義変更リスク

法人が合併や吸収により消滅した場合、借地権は存続会社に承継されます。これは相続に準ずる包括承継とみなされ、原則としてオーナーの承諾は不要です。
しかし、オーナーは、名義変更通知を受けて新しい借地権者(存続会社)を正確に把握しておく必要があります。

法人契約でオーナーが取るべき契約管理対策

法人相手の契約では、リスクヘッジのために以下の対策を講じることが強く推奨されます。

1.連帯保証人の確保

法人の倒産リスクに備え、契約時に法人の代表者個人または別法人連帯保証人として確保します。これにより、法人が地代を支払えなくなった場合でも、個人保証人から地代を回収する権利がオーナーに残り、収益途絶のリスクを大幅に軽減できます。

2.法人の信用情報の定期チェック

定期的に法人の登記事項証明書を取得し、商号、所在地、役員構成、解散の登記などがされていないかを確認します。これにより、倒産の兆候や、合併による名義変更を早期に察知できます。

地代の支払いサイトの短縮

法人は個人の収入サイクルとは異なり、資金繰りの都合で地代の支払いが遅延しがちです。
契約書で地代の支払いサイトを厳格に定め、遅延時のペナルティ(延滞損害金)を明確にすることで、滞納リスクを抑制します。

倒産時の法的対応手順

法人が倒産手続き(破産、民事再生など)に入った場合、オーナーは速やかに対応する必要があります。

1.破産管財人との交渉

オーナーは、裁判所が選任した破産管財人と連絡を取り、滞納地代の支払い、または借地契約の解除について交渉します。

破産管財人は、借地権を破産財団の一部として売却しようとすることが多いため、オーナーは、買取や契約解除を提案し、土地の利用権回復を目指します。

2.契約解除の立証

法人が倒産した事実は、地代支払いの停止を伴うため、「信頼関係の破壊」にあたり、契約解除の正当事由となります。オーナーは、管財人に対し、滞納地代の催告と契約解除の意思表示を書面で行い、法的立場を強化します。

法人契約は、高額な地代収入が期待できる反面、倒産時のリスクが大きいため、事前の連帯保証人の確保と、信用情報の継続的なチェックが最も重要なトラブル回避策となります。

まとめ

借地権者が法人の場合、解散・倒産による借地権の消滅リスクと、合併による無承諾の名義変更リスクという特有のトラブルがあります。トラブル回避の最重要対策は、契約時に法人の代表者個人を連帯保証人として確保することです。また、法人の登記事項証明書を定期的にチェックし、倒産の兆候や名義変更を早期に察知する必要があります。
倒産手続きに入った場合は、速やかに破産管財人と連携し、滞納地代の催告契約解除を提案することで、土地の利用権回復を目指すべきです。