
底地が複数の親族による「共有名義」となっている場合、問題の解決は極めて困難となります。売却や賃貸契約の変更には、共有者全員の同意が必要となるため、一人でも反対者が出れば、その底地は事実上「凍結」してしまいます。この事例は、意見の合わない親族間で共有されていた底地を、裁判所の「共有物分割訴訟」を利用して現物分割し、その後、それぞれの区画を各自の判断で売却することで、複雑な共有関係を解消し、資産を流動化させたケースです。
共有者間の意見対立と資産の凍結
郊外に約500坪の底地(借地権者1名)を従兄弟4名で共有していたA氏(60代)。
A氏は「早期に売却したい」が、他の共有者は「地代収入を維持したい」「売却価格が低い」などと主張が分かれ、売却の同意が得られない状態。全員の同意が必要なため、地代改定交渉すら進められず、資産が不良資産として凍結していました。共有状態を解消し、各自が自由に資産を処分できるようにするのが目標。
解決に向けた戦略的アプローチ
A氏は、話し合いによる解決が不可能であると判断し、弁護士を通じて「共有物分割訴訟」の提起に踏み切りました。
1.共有物分割訴訟の提起
この訴訟の目的は、裁判所に共有状態の解消を命令してもらうことです。訴訟の中で、裁判所は当事者間の公平性を考慮し、分割方法(現物分割、代償分割など)を決定します。
2.現物分割案の提示
A氏側は、裁判所に対し、「底地を4つの区画に物理的に分割し、それぞれを単独所有にする」という現物分割案を提示。この際、不動産鑑定士の評価に基づき、各区画の価値がほぼ均等になるように提案しました。
3.裁判所による分割の決定
裁判所は、現物分割が最も実効性が高いと判断し、土地の「単独所有権化」を命じる判決を下しました。
共有状態の解消と迅速な資産処分
判決に基づき、底地は4つの区画に物理的に分割され、A氏を含む4名はそれぞれ自分の区画を単独所有することになりました。
A氏は、自分の区画を単独所有となった直後、底地専門の買取業者に速やかに売却し、希望通りに資産を現金化することに成功しました。他の共有者も、単独所有となったことで各自の判断で売却や保有を継続し、意見の対立は解消しました。
この事例は、共有者間の意見対立による資産の凍結という深刻な問題に対し「共有物分割訴訟」という法的手続きが、最終的な解決策となり得ることを示しています。
まとめ
意見対立により売却同意が得られず、資産が凍結していた共有底地の事例では、オーナーA氏が「共有物分割訴訟」を提起。不動産鑑定評価に基づく現物分割案を裁判所に提示することで、土地の単独所有権化という判決を勝ち取りました。これにより、A氏は自分の区画を単独で売却し、資産の流動化と共有者間の問題の解消という、最良の結果を得ることができました。
