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底地の収益改善というと、地主が単独で地代を見直したり、活用策を考えたりするイメージが強いかもしれません。
しかし実際には、「借地人」との関係を活かし、双方の利益を高める協働型アプローチが注目されています。
借地人もまた、借地権を活かして店舗や住宅を維持する立場にあり、地主との関係が良好であれば、より柔軟な取り組みが可能です。
本コラムでは、地主と借地人が“パートナー”として底地の価値を高める戦略を具体的に解説します。
「対立」から「共創」へ関係性の再構築
従来、底地と借地の関係は「地主が貸す側」「借地人が借りる側」という一方通行でした。
しかし、人口減少・土地利用の多様化が進む今、両者が協力し合わなければ土地の価値を維持できない時代になっています。
- 借地人の建物が老朽化しているが、再建築には地主の承諾が必要
- 地代が古い契約のままで、地主も借地人も損をしている
- 土地の一部が未利用で、双方に収益機会がある
このようなケースでは、対立ではなく「共創」という視点に立つことが、結果的に双方の収益向上につながります。
地代改定を「交渉」ではなく「提案」に変える
地代の見直しを地主側から切り出すと、借地人は「負担増」と受け取ることがあります。
そこで有効なのが、“提案型の見直し”です。
- 建物の改修を地主が一部支援する代わりに、適正地代へ調整
- 契約更新時に定期借地へ切り替え、期間と条件を明確化
- 借地人が使用していない部分を地主が収益利用(駐車場・看板設置など)
このように、借地人にとってもメリットのある提案とセットにすることで、地代改定が「交渉」から「合意形成」へと進みやすくなります。
借地人の事業と連携した収益化モデル
最近では、借地人が店舗やオフィスを運営しているケースで、地主がその事業と連携し、共に収益を生み出す仕組みが増えています。
下記が代表的なモデルで、これらの取り組みは単に地代収入を上げるだけでなく、底地のブランド価値を高める効果もあります
- 建物のリニューアルを共同出資で行い、家賃増加分をシェア
- 店舗の一角を地主が貸与し、販売スペースやカフェコーナーを展開
- イベント・マルシェなどを共同開催し、地域集客を図る
契約再構築による「未来型底地」への転換
借地契約を長年維持していると、内容が時代に合わなくなることがあります。
特に、旧法借地契約(更新型)は地主側の裁量が小さく、柔軟な活用がしにくいのが現実です。
そのため、地主と借地人の合意に基づき、下記の契約再構築を行うことで収益構造を近代化できます。
- 定期借地権への転換
- 一部土地の返還・交換
- 建替え時の収益分配型契約への変更
このプロセスを進めるには、弁護士や不動産コンサルタントの関与が不可欠ですが、成功すれば双方にとっての「再出発」になります。
成功事例:共同再開発による価値向上
東京都内では、借地人が高齢化し、建物が老朽化していた底地を、地主と借地人が協力して再開発した事例があります。
地主が土地を提供し、借地人が事業主として参加、共同で小規模商業施設を建設。
その結果、下記のような「三方良し」の結果を生み出しました。
このような協働型収益改善モデルは、今後の底地再生の鍵になるといえます。
- 地主は従来の数倍の地代収入を獲得
- 借地人は安定した店舗経営を継続
- 地域全体の地価上昇にも寄与
まとめ
底地の収益改善を考えるうえで、借地人は“交渉相手”ではなく“協働相手”です。
互いの課題やニーズを共有し、再構築の道を探ることで底地はより柔軟で持続的な収益を生み出す資産に進化します。
「対立」ではなく「共創」。それがこれからの底地経営のキーワードです。
