地代改定の失敗を「事業用定期借地権」によって再生

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地代改定交渉に失敗し、収益が固定化してしまった底地は、オーナーにとって不良資産化のリスクが高まります。しかし、借地権者が退去し、一時的に更地となったタイミングを逃さず、「事業用定期借地権」という新しい契約形態に切り替えることで、収益性を劇的に改善できる可能性があります。この事例は、低額地代に固定化していた底地を、戦略的な再活用により、安定した高額地代を得られる優良資産に転換させたケースです。

低収益の固定化

幹線道路沿いの好立地にある底地を所有していたA氏(50代)。
長年の低額地代が固定化し、地代改定交渉も決裂。収益性が極端に低い状態でした。幸いなことに、旧借地権者が事業の失敗により退去し、建物が解体されて土地が更地となりましたが、次の借地権者には、相場に見合った高額な地代を、安定した形で長期間受け取りたいというのが目標。

解決に向けた戦略的アプローチ

A氏は、借地借家法が改正された後の契約形態に着目し、高収益と確実な返還を両立させる戦略を採りました。

1.事業用定期借地権の導入

次の借地権者を探すにあたり、「事業用定期借地権」(存続期間10年以上50年未満)での賃貸を募集しました。この契約は、契約の更新がなく、期間満了とともに土地が確実にオーナーに返還されるという点が最大のメリットです。

2.高額地代の設定

土地が確実に返還される(完全所有権化が担保される)ため、借地権者側も安心して高額な建物を建てることができます。A氏は、通常の普通借地権契約よりも高い水準の地代を設定しました。

3.ターゲットの選定

安定した地代収入を確実にするため、全国展開しているコンビニエンスストアロードサイド型飲食店などの法人をターゲットに募集をかけました。

収益の劇的改善と将来の確実な土地返還

大手コンビニエンスストアチェーンとの間で、20年の事業用定期借地権契約を締結することができました。
以前の低額地代と比較して、地代収入は約3倍に増加しました。また、20年後には土地が確実に更地で返還されることが保証されたため、底地の資産価値と流動性も大幅に向上しました。

この事例の成功は、一時的な更地化の機会を逃さず、「事業用定期借地権」という新しい契約形態を戦略的に導入することで、収益性の向上と将来の土地返還の確実性という、二つの大きな課題を同時に解決した点にあります。

まとめ

低額地代に固定化し収益性が低かったJ氏は、旧借地権者の退去で一時的に更地となった機会を逃さず、「事業用定期借地権」を導入しました。この契約形態により、20年後に土地が確実に返還されるというメリットを担保し、安定した大手法人(コンビニエンスストア)に対し、以前の約3倍となる高額な地代で賃貸することに成功。収益性の劇的改善将来の土地返還の確実性を同時に実現しました。