等価交換で底地を所有権区画に変えた事例

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複数の借地権者が存在する広大な土地の底地を所有している場合、個別の借地権を買い取ることは多大な費用と時間がかかり現実的ではありません。この事例は、複数の借地権が絡み合う土地を所有していたオーナーが、「交換分合(等価交換)」という高度な手法を活用し、現金を支払うことなく、土地の一部を完全所有権(自用地)の区画に変えることに成功したケースです。

複雑な権利関係と利用制限

地方都市の駅前に、5区画の底地(全て旧法借地権)を所有していたA氏(70代)。
5つの借地権が絡み合い、それぞれの地代改定時期も異なるため、管理が極めて煩雑でした。土地全体の立地は良いものの、全てが底地のため、A氏自身が土地を利用して再開発する自由度が全くなく、現金を支出せず一部だけでも完全な所有権の土地を取得し、将来の相続で利用しやすい資産にしたい。

解決に向けた戦略的アプローチ

A氏は「現金を介さずに権利を整理する」という方針を立て、不動産コンサルタントと税理士と連携しました。

1.借地権者間の連携

A氏は、5人の借地権者に対し「このままでは全員の土地の利用価値が低いまま固定化する」と伝え、全員が協力するメリット(完全所有権の取得)を強調しました。

2.専門家による厳密な評価と換地設計

土地全体の更地価格、A氏の底地権、各借地権者の借地権を厳密に算定しました。その結果に基づき、土地を物理的に区割りし「A氏が取得する完全所有権区画」「各借地権者が取得する完全所有権区画」の価値が『等価』となるよう換地設計を行いました。

3.清算金による調整

厳密な等価交換は不可能であるため、生じたわずかな差額については清算金として現金で調整しました。A氏は、借地権者から受け取った清算金を、専門家への報酬に充てることができました。

完全所有権区画の獲得と節税メリット

全ての借地権者との間で交換分合が成立しました。

A氏は、土地全体の約35%完全な所有権の土地として取得することに成功しました。この区画はすぐに高値で賃貸に出され、底地時代を遥かに超える収益を生み出しました。さらに、税理士の指導の下「固定資産の交換特例」の適用を受け、譲渡所得税の課税を繰り延べるという大きな節税メリットも享受できました。

交換分合は複雑ですが、現金を支出せずに不良資産を優良資産に変貌させることができ、税制優遇まで受けられる、広大な底地オーナーにとって最も強力な再活用戦略です。

まとめ

複雑な権利関係にある広大な底地を所有していたA氏は、交換分合(等価交換)という高度な手法を活用しました。専門家による厳密な換地設計と清算金の調整により、現金を支出することなく土地全体の約35%完全所有権の土地として取得。この優良区画を賃貸に出すことで収益が大幅に向上した上、「固定資産の交換特例」により譲渡所得税の課税繰り延べという税務上の大きなメリットも得られました。