
底地オーナーが将来的に売却や再活用を検討する際、最も大きな障害となりやすいのが、隣地との境界トラブルです。
隣地との境界が曖昧なまま放置されていると、売却時に買い手がつかない、あるいは隣地権者との交渉が長引き、高額な費用と時間を費やすことになります。トラブルを未然に回避し、底地の資産価値を確実にするためには、境界確定と地積測量を事前に行い、境界を法的に明確にしておくことが極めて重要です。
境界の曖昧さが引き起こす将来のリスク
境界が曖昧であること(隣地との間に塀や生垣があるだけで、法的な確定図がない状態)は、以下のリスクを発生させます。
1.売却時の障害
不動産の買い手(特に専門業者やデベロッパー)は、境界が確定していない土地の購入を避ける傾向があります。これは、将来的な境界トラブルのリスクを負いたくないためです。
2.建替え時の障害
借地権者が建替えを行う際、建物が隣地との境界線上に越境する可能性があり、隣地権者とのトラブルが発生し、工事が中断する原因となります。
3.時効取得のリスク
隣地権者がオーナーの土地の一部を、自己の所有地と誤信して一定期間占有し続けた場合、その部分の所有権を時効によって取得されるリスクがあります。
トラブル回避のための「境界確定」と「地積測量」
境界トラブルを恒久的に回避するための対策は、以下の2つの手続きを完了させることです。
1.境界確定(隣地権者との合意)
- 目的
オーナーの土地と隣地との境を、隣地権者の立会いと合意のもとで確定させます。 - 方法
土地家屋調査士に依頼し、過去の公図や登記情報を基に境界線を調査し、隣地権者と協議します。合意が得られた境界線には境界杭を設置します。
2.地積測量(法的な測量図の作成)
- 目的
確定した境界線に基づいて、土地の正確な面積(地積)を測量し、法的に有効な測量図を作成します。 - 成果
作成された測量図は、法務局に備え付けられる地積測量図の基礎となり、将来の売却時に不動産の正確な面積と範囲を証明する決定的な資料となります。
境界確定が難しい場合の対処法
隣地権者との協議が不調に終わったり、隣地権者が不明であったりする場合、境界確定は困難になります。
1.筆界特定制度の活用
隣地権者の協力が得られない場合、法務局の筆界特定制度を利用し、行政の専門官に境界(筆界)の位置を調査・特定してもらうことができます。これは裁判よりも迅速かつ費用を抑えられる手続きです。
2.境界確定訴訟
筆界特定制度でも解決しない場合、最終的には境界確定訴訟を提起し、裁判所の判決によって境界を確定させる必要があります。ただし、これは時間と費用が最もかかる手段です。
オーナーは、土地の価値を確実に保全するため、売却や再活用を検討する数年前に、土地家屋調査士と連携し、境界確定と地積測量を完了させておくことが賢明です。
まとめ
底地の境界が曖昧なまま放置されていると、将来の売却時の障害や時効取得リスク、建替え時の越境トラブルの温床となります。トラブル回避のためには、土地家屋調査士に依頼し、隣地権者の立会いと合意を得て境界を確定させ、境界杭を設置することが不可欠です。合意に基づき作成された地積測量図は、土地の正確な面積を証明する法的な資料となり、資産価値を確実なものとします。隣地権者の協力が得られない場合は、法務局の筆界特定制度を活用し、裁判を回避することが賢明です。
