
底地経営において、すべての底地が安定した収益を生み出すとは限りません。中には、地代収入が固定資産税を下回る逆ザヤ状態にあるものや、借地権者とのトラブルが常態化し、多大な時間と精神的負担を強いられる「不良資産」と化した底地が存在します。収益改善のためには、これらの不良資産を「見切る」勇気と、損を最小限に抑えて処分する戦略が必要です。不良資産を抱え続けることは、オーナーの貴重な時間、精神的なエネルギー、そして資金を圧迫し、他の優良資産の収益機会を失わせる最大の障害となります。
「不良資産」と見切るべき3つの判断基準
以下の3つの基準に複数該当する場合、その底地は保有し続けるメリットよりも、処分するデメリットの方が大きいと客観的に判断できます 。
1.恒常的な赤字(逆ザヤ)状態
地代収入が、毎年支払うべき固定資産税・都市計画税の合計額を3年以上下回っている場合。
地代改定交渉を試みても、借地権者が不当に拒否し続け、調停・訴訟費用が地代増額分を上回ることが確実な場合。この底地は、毎年オーナーの資産を蝕んでいます。
2.深刻なトラブルの常態化と費用の継続発生
地代滞納が続き、督促や法的手続き(弁護士費用)に毎年のように時間と資金を費やしている場合。あるいは、借地権者が無断増改築や土地の不適切な利用を繰り返し、契約解除訴訟のリスクを常に抱えている場合。精神的ストレスも加わり、他の資産管理に支障をきたします。
3.著しく低い流動性と再活用見込みの欠如
旧法借地権が設定されており、かつ立地が悪く、借地権者も買い取りに興味を示さず、第三者への売却も専門業者しか買わないような、流動性が極めて低い場合。将来的な再開発や完全所有権化の見込みが全く立たない場合は、不良資産と見切るべきです。
不良資産処分の「損を最小限にする」戦略と税務上のメリット
不良資産と判断した場合、処分を遅らせるほど損失は拡大します。
以下の戦略で、損を最小限に抑えつつ、オーナーの時間と資金を解放し、収益改善に繋げます。
1.底地専門の買取業者への売却(即金化)
一般市場では買手がつかないため、まずは底地専門の不動産買取業者に打診します。買取価格は市場価格より割引かれますが、即金性が高く、オーナーは煩雑なトラブルから一挙に解放されます。専門業者はトラブル込みで買い取り、その解決ノウハウを持っているため、最も迅速な解決策となります。
2.損益通算による節税の活用(税務戦略)
売却により損失(譲渡損失)が発生した場合、その損失を他の不動産所得や給与所得と相殺する損益通算の適用を検討します。これにより、売却に伴う損失を税金面で一部補填することが可能です。売却の時期を税理士と相談し、最大限の節税効果が得られる年度を選ぶことが賢明です。
3.弁護士費用を「譲渡費用」として計上
売却に際して、未払い地代の回収や契約解除のためにかかった弁護士費用は、譲渡費用として売却益から控除できる場合があります。トラブル解決費用を売却に伴う経費として計上することで、譲渡所得の課税対象額を減らすことが可能です。
不良資産の早期処分は、オーナーの貴重な時間、精神的なエネルギー、そして資金を解放し、他の優良資産の管理や新たな収益機会の追求に集中するための、最も重要な収益改善策となります。
まとめ
収益改善のためには、地代収入が固定資産税を下回る恒常的な逆ザヤ状態や、トラブルが常態化している「不良資産」を見切る勇気が必要です。不良資産を抱え続けることは、オーナーの時間と精神的なエネルギーを奪い、他の優良資産の収益機会を圧迫します。処分戦略では、底地専門の買取業者への売却により即金化を図り、損失が発生した場合は損益通算による節税と、弁護士費用を譲渡費用として計上するなど、税務戦略を駆使して損を最小限に抑えることが不可欠です。早期の処分こそが、他の資産の収益向上に繋がる最重要の改善策となります。
