承諾料交渉とオーナーの権利行使

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借地権者が借地上の建物を建替えたり増改築したりする場合、原則としてオーナーの書面による承諾が必要です(借地借家法第17条)。これは、建物の構造や利用状況が変わることが、オーナーの土地の価値や将来的な利用計画に影響を及ぼすためです。オーナーは、承諾を与える対価として承諾料を受け取る権利を有しますが、単に承諾料を受け取るだけでなく、承諾条件を明確にすることで、将来のリスクを回避することができます。

建替え・増改築承諾の判断基準

オーナーが承諾を与えるか否かを判断する際、考慮すべきポイントは以下の通りです。

1.構造・用途の変更

  • 木造→鉄筋コンクリート造(RC造)など、建物の構造が著しく変わり、土地の拘束期間が長期化しないか。
  • 住宅→店舗など、建物の用途が変わることで、土地の利用状況が悪化しないか。

2.資力と信用力

新たに建替えを行う借地権者に、継続的な地代支払い能力があるか、ローン返済能力があるかを確認します。

3.契約期間への影響

建替えに伴い、借地借家法第7条の規定により借地期間が延長される特約を要求されるかを確認します。通常、新たに建替えが行われた場合、借地権の存続期間は建替えの日から20年となります。

建替え・増改築承諾料の相場と交渉術

承諾料は、オーナーが承諾することで生じるリスクや、借地権者が得られる利益(建物の耐震性向上、資産価値向上など)に対する対価として支払われます。

1.相場

一般的に、更地価格の3%~10%程度が目安とされています。建替えよりも増改築の方が、相場は低くなる傾向があります

2.交渉術

【客観的な根拠】

オーナーは、建替え後の建物の価値向上分や、土地の拘束期間延長によるリスク増加分を根拠に、承諾料の額を交渉します。

【承諾条件の付加】

承諾料の金額交渉と同時に、承諾条件として以下の事項を盛り込むことで、将来のリスクを軽減します。

  • 建替え後も地代の増額改定に応じることを確約させる。
  • 借地権の更新時期について、オーナーに有利な条件を盛り込む。
  • 建物の用途変更を再度禁止する特約を締結する。

無断での建替え・増改築とオーナーの権利行使

借地権者がオーナーの承諾を得ずに無断で建替えや増改築を行った場合、これは「信頼関係の破壊」とみなされ、オーナーは借地契約を解除する正当な理由となります。

  • オーナーの対応
    無断行為が発覚した場合、オーナーは速やかに内容証明郵便で抗議し、工事の中止を求めます。その後、弁護士と連携し、建物収去土地明渡訴訟の提起を検討します。
  • 裁判所の判断
    裁判所は、「信頼関係の破壊」の有無を厳しく審査します。単なる無断というだけでなく、地代滞納などの他の契約違反行為が複合している場合に、契約解除が認められやすくなります。

建替え・増改築の承諾は、底地経営における重要なターニングポイントです。オーナーは承諾料の交渉だけでなく、承諾後のリスクを見越した条件整備に重点を置く必要があります。

まとめ

借地上の建替えや増改築には、原則としてオーナーの書面による承諾が必要です。オーナーは、承諾の対価として、更地価格の3%~10%程度が目安とされる承諾料を受け取ることができます。交渉では、承諾料の金額だけでなく、建替え後の地代増額契約期間の特約など、将来のリスクを回避するための承諾条件を付加することが重要です。無断での増改築は契約解除事由となり得るため、発覚した際は弁護士と連携し、迅速に建物収去土地明渡訴訟の準備を進める必要があります。