
底地オーナーの収益は、毎月の地代だけでなく、更新料、名義変更承諾料、建替え承諾料といった一時金収入によっても大きく左右されます。これらの承諾料は、契約上の節目や借地権者の行為に対して請求できるオーナーの重要な権利ですが、請求のタイミングや手続きを誤ると、請求権を失ったり、請求を拒否されたりするリスクがあります。安定した収益性を維持・向上させるためには、これらの請求漏れを防ぐための厳格な契約管理体制が必要です。
請求漏れが多い「一時金収入」の種類と法的根拠
底地オーナーが請求できる主な一時金収入と、その法的性質は以下の通りです。
| 一時金の種類 | 法的根拠/慣習 | 請求を拒否されるリスク | |
|---|---|---|---|
| 更新料 | 契約期間満了時 | 契約書または地域の慣習 | 契約書に規定がなく、慣習も認められない場合 |
| 名義変更承諾料 | 借地権の譲渡時(売買・贈与) | オーナーの承諾が必須であることの対価 | 承諾なしに譲渡が行われ、後に発覚した場合 |
| 建替え承諾料 | 借地上の建物を建替え・増改築する時 | オーナーの承諾が必須であることの対価 | オーナーが不合理な理由で拒否した場合 |
特に、旧法借地権の時代から続く古い契約書には、これらの規定が曖昧、または存在しないケースが多く、請求漏れの原因となります。
収益改善のための厳格な契約管理術
1.台帳管理のデジタル化
すべての底地について、以下の情報を網羅したデジタル台帳(スプレッドシートや専用ソフト)を作成します。
- 契約満了日
更新料請求の期限管理。 - 承諾料の規定
契約書に記載された更新料・承諾料の金額または算定式。 - 借地権者の情
氏名、連絡先、建物の構造。
2.期限の事前通知と二重チェック
- 更新料
契約満了の2年前にはシステムからアラートが出るように設定し、請求漏れを防ぎます。 - 名義変更
借地権者から建物の売却相談があった際、承諾料の規定を即座に確認し、手続きの際に速やかに請求します。
3.承諾書による記録の徹底
名義変更や建替えを承諾する際は、必ず承諾書を交わし「承諾料を〇〇円受領した」旨と、「その後の契約内容」を明確に記載します。この承諾書は、将来的な税務上の証拠や次の更新時の判断材料として不可欠です。
請求を拒否された場合の対処法
契約書に更新料の規定がない場合でも、地域に根付いた慣習が認められれば請求は可能です。しかし、請求を拒否された場合は、オーナーは弁諾士と相談し、地代増額の交渉とセットで話し合いを進めるなど、別の交渉材料と結びつける戦略が必要です。承諾料の請求漏れは、そのままオーナーの収益の機会損失となります。管理業務のプロである不動産管理会社や司法書士に依頼し、管理体制を構築することが、最も確実な収益改善策です。
まとめ
底地経営の収益性は、毎月の地代だけでなく、更新料・名義変更承諾料・建替え承諾料といった一時金収入の請求漏れを防ぐことで大きく改善します。オーナーは、契約満了日や承諾料の規定を網羅したデジタル台帳を作成し、更新時期の2年前には請求漏れを防ぐためのアラートを設定するなど、厳格な期限管理を行う必要があります。請求を拒否された場合は、地代増額交渉とセットで進めるなどの戦略が必要です。収益機会損失を防ぐため、専門の不動産管理業者や司法書士に依頼し、管理体制を構築することが最も確実です。
